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金融検査マニュアルの廃止。いわゆる「自己査定」はどうなる?

金融庁の検査局が昨年夏に廃止されました。金融検査マニュアルも年末に廃止の決定がされる
予定です(廃止時期自体は平成31年4月1日以降)。
背景には、以下の要因があります。

 ・バブル崩壊による不良債権問題がひと段落した
 ・多様化した経営悪化要因に対して適切な融資ができていない
 ・各金融機関のビジネスモデルと乖離した画一的な検査基準による弊害など

廃止にあたり、金融庁では「融資に関する検査・監督の考え方と進め方」のディスカッション
ペーパーの意見募集を開始しました。

 関連リンク:金融庁の報道発表資料
 https://www.fsa.go.jp/news/r1/yuushidp/20190910.html
 https://www.fsa.go.jp/news/r1/yuushidp/yuushidpgaiyou.pdf

金融機関にはそれぞれ個性があり、経営理念・戦略の多様性に合わせた検査を実践する事が目
的です。
金融検査マニュアルの別表には、金融機関が債権を査定し、債務者を「正常先」「要注意先」
「要管理先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」に区分して債権を分類(Ⅰ~Ⅳ分類)
し、これに基づいて、償却・引当所要額を算定する「基準」が明記されています。いわゆる
「自己査定」と呼ばれるものです。

弊社のシステムオプションにはこの「自己査定」機能があります。
廃止以降の業務はどう変わるのか、システムの改修はどうなるのか次の3つにポイントを絞っ
て考えてみたいと思います。

 1.立ち入り検査が無くなるのか
 2.自己査定の基準が無くなるのか
 3.システムの変更は必須なのか

 まず1つ目「立ち入り検査が無くなるのか」。
これは無くなりません。監督局と総合政策局が実施しています。各金融機関の経営理念・戦略
の多様性に合わせた検査を実践する事が目的ですので当然です。

 次に2つ目「自己査定の基準が無くなるのか」。
別表における自己査定や債券償却、貸倒引当金など「基準」に基づいた実務は否定しないとの
ことなので、無くなることはありません。各社では自己査定基準及び償却・引当基準が策定さ
れていて、それに基づいて実務を遂行しています。この現状の実務を出発点に、より良い実務
に向けた創意工夫を進めやすくするために廃止すると言っています。
また、これまでの過去実績や定量・定性情報から引当を見積もる実務に加えて、今後は将来の
リスクを引当てに反映することが可能になるとのことです。
赤字や債務超過などの表面的な現象ではなく、その企業の特性や将来性を見極めるなどして
査定・判断を行うことは金融検査マニュアルにも明記されています。これを踏まえると今回の
廃止に至っては特別新しいことをうたっているとは思いませんが、大きな組織にあって形式主
義が確立されてしまうとリセットに近い方法を取らざるを得ないのでしょう。
一度も延滞をしていないのに形式に沿うと「実質破綻先」と判定されてしまうケースなどもあ
ったようです。
金融庁の考えには「新しい検査・監督においては、検査マニュアルを廃止し、各分野の考え方
・進め方に関するディスカッション・ペーパー等を活用することで、重箱の隅をつつくような
指摘や、形式的な違反の確認、本来は金融機関において行うような細部についての検査を行わ
ない方針を更に徹底したものです。」と明記されています。

 最後に3つ目「システムの変更は必須なのか」。
当面は債務者区分判定などシステム基本機能の大きな改修は無いと思われます。
金融庁の考えに「従来の自己査定や償却・引当に関する実務が否定されるものではなく、これ
らに関する内部規程やシステムの変更が求められるものでもありません。」と明記されていま
す。ただし、ディスカッションペーパーをもとに「今後も事例の蓄積や関係者間での認識の共
通化が求められている。」との取り組み方針が打ち出されていますので、必要に応じて内部規
定の変更が行われるべきであり、その変更内容がシステムに影響するのであればシステム変更
が必要となってきます。


 システムを作る側からしますと、数値基準など形式化されていることが大切ではあるのです
が、お客様の業務の助けとなる「良い仕掛け」を作るためには、個々のお客様の業務特性や将
来性などを勘案した視点での設計も心掛けていきたいと改めて思いました。

最後になりますが、今後、リース業務や会計税務、金融関連のニュースに対して私たちなり
の解釈・情報発信をしてゆきたいと思います。

text/島田